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第31弾:「球巣発見の季節」
紅葉の季節。先日、北海道の大雪山がテレビに映し出されていた。
山一面を赤や黄に染める落葉広葉樹の紅葉は本当に見事である。
フィールドにしている堤防を歩いてみると、ヤマグワの葉が黄色に変わっている。
チガヤやヨウシュウヤマゴボウの葉は赤や紫に変わっている。
小さな植物たちが秋を告げているのだ。
蝶はというと、ウラナミシジミが多くなってきた。
テングチョウの姿もみられる。キチョウは秋型に翅の紋様を変えている。
まだまだ暑い日が多いが、夏が終わり秋へと季節が変わったことを感じることができる。
この季節、楽しみなのがカヤネズミの球巣の発見。河川敷のオギ原に球巣を見つけることができるようになるのだ。
こんな場所に、こんな高さに、こんなにも近くに、こんなにも多くなどと、感動しっぱなし。
秋を感じながら、感動を味わう。
秋には色々あっても、やっぱり感動の秋がいい。
竹入隆弘(たけいり・たかひろ/岡山市)
第32弾:「里山」
私は新宿から約1時間の多摩ニュータウンの一角に住んでいます。
都心から1時間のこの街に、タマノカンアオイ、キンラン、ギンランなどの希少種の植物、蝶、カブトムシなどの多くの昆虫、オオタカ、タヌキなどが生息する素晴らしい里山があります。たくさんの縄文期の遺跡、中世の城址、近世の明楽院塚なども残り、自然と歴史の宝庫となっています。
しかし残念なことに、この里山の8万本の樹木を伐採し、87haの山を崩し、谷を埋めて、7600人の街と二本の幹線道路をつくる開発計画が進められています。私はぜひこの里山の自然を守りたくて地元の団体の方々と一緒に種々の活動を行っています。
私が本格的にこの里山の保護活動に加わったのは今年の春からです。いろいろと調べてみると、平成6年、7年、11年に実施された開発予定地域のアセズメント調査で営巣と捕獲によりカヤネズミの生息が確認されている事がわかりました。
1998年版の「東京都の保護上重要な野生生物種」では、東京都区部、南多摩地区、西多摩地区において、「(国の)希少種に相当する種」とされています。カヤネズミの生息を再度確認して開発阻止の追い風にしたいと思い、何度か現地に入ってみました。しかし調査を実施した時期が秋も深まり冬の気配を感じる時期で、そこに生えるススキ、ヨシ、オギは殆ど枯れて倒れてしまっていたためなのか営巣は確認出来ませんでした。また、カヤ原も放置されたままなので、ノイバラ、クズ、アズマザサなどがはびこり、大分荒れてしまっていました。
カヤネズミはカヤ原が自然のまま維持されやすい河川敷や湿地を主な生息地としています。里山や谷戸も生息地にしていますが、そういったところではカヤの利用などで適度に人の手が加えられないとカヤ原が維持されず、生息は難しいようです。
問題の里山のカヤネズミの生息が確認されている地域は適度に管理をすれば非常にきれいなカヤ原が維持できて、カヤネズミや草原性の野鳥の楽園となるような場所と思います。ぜひとも開発を止めて、荒れたカヤ原が復元するよう地元の方々と協力して活動して行きたいと思います。
日本は極相が森林ですから、都市近郊でも森や林は比較的見かける機会は多いと思います。しかし、カヤ原や草地はなかなかそういう訳には行きません。適度に、自然を壊さない程度に手を入れてやる必要があります。自然を眺めて満足するだけでなく、人間が自然に働きかけてそういう自然を維持する。そして、そこにカヤネズミや草原性の動植物が生息する。それがまた人間の心の憩いになる。そういう事って素晴らしい事だと思います。
西村 秀樹(にしむら・ひでき)